設立趣旨書

 平成 16 年、大阪のプロ野球チームとして実に 55 年間にわたり我々に夢と感動を与えてくれた大阪近鉄バファローズが、晴天の霹靂とさえ言える他チームとの合併という形で消滅した。一部の経営者が己の論理を強引に推し進めようとしたことに、日本全国の野球ファンが反対の声を上げ、選手会が初のストライキまで行ったにも関わらず、経営者側は耳を貸さず、本来プロスポーツが持つ文化的側面に対する配慮はかけらも存在しなかった。ファンは球団の在り方に対して何ら意見を述べる機会すら与えられず、最後まで経営者側からファンへのステートメントさえも発表されないという、異例の事態となって終結した。そして昨今から叫ばれていた野球離れにますますの拍車がかかることとなり、もはや国民的スポーツと呼ばれた面影は存在しないのである。特に関西を中心とするパリーグファンの落胆は予想を越えるものがあり、応援することが人生の一部となっていた人達の中には、生きる目的さえ失ってしまった人が多い。

  なぜ大阪近鉄バファローズは合併したのであろうか。それは現在のプロ野球が、親会社の論理で全て動いているということに尽きる。親会社の近畿日本鉄道の経営状態が悪化し、年間約 30 億円の赤字を出していた球団が整理の対象になるのは、経営という点からすれば当然かもしれない。しかし本来スポーツが持つ文化的側面を考えれば、プロ野球チームの存在が消えたことは、西日本最大の都市である大阪にとって非常に大きな損失ではないだろうか。サッカーでは逆に、各地方都市に続々とチームが誕生しているのと比べると実に対照的だ。

 その結果、言わば切り捨てられたファンの中から、このような現状をよしとせず、従来とは違う新しいプロ野球チームを作りたいと考える人々が集まり、ここに「夢球団設立連絡会」を設立することとなった。我々は球団合併という悲劇を乗り越え、親会社の宣伝、単なる興行を目的とする球団ではなく、地域社会の一員として、地域と共に考え、歩み、成長していくことで、真に「地域密着」を目指す「市民球団」を設立することを目的とする。

 従来のプロ野球では「ファン」「選手」「球団」の間の関係が一方的で、特にファンの意見は親会社の判断の前では全く無力であった。そのことで野球が持つ社会的機能を充分に果たしていなかったのではないだろうか。特に「ファン」の日常において「選手」は非常に遠い存在であった。昨年、「ファン」と共に大阪近鉄バファローズの「選手」は手を携え合併反対署名活動を行った。ファンと選手の絆が築かれた瞬間でもあった。しかしそれは経営者の赤字解消プログラムの一環として、完全に黙殺された状態であたかもレールを走る列車の軌道のとおりにひとつのチームを消滅させた。

 現代のプロ野球は大阪だけに限らず、限られた人達が球場で観戦したり、報道による結果のみで一喜一憂するものとなっており、「選手」と接する機会も無いに等しい。次に、「見せる人」である運営者は、球場やマスメディアなどが従来から持つマーケットや親会社の制度的な制約を受けてしまい、自由に運営し難い現状がある。また「選手」は、社会から隔絶されたともいえるグラウンドで技術の研鑚に励み、そこでいかに生き残るかという事に労力をつぎ込んでいる。

 そこで我々は、従来の親会社依存型ではない新たな運営システムにより、「地域密着」による「市民球団」を設立することを提案する。まず「市民球団」とは、一般市民から広く出資を募ることで、一般市民の意見を広く経営に取り入れる球団である。「ファン」は単に試合を観るだけではなく、応援する野球チームそのものが成立していく過程から「創る人」「育てる人」であるという自覚を持てる一方、そこでのコミュニケーションや試合観戦を通じて、現代社会におけるさまざまな事象や課題、価値観等を享受、共有することがより可能となる。最近、地域社会における人間関係が希薄になっていると言われているが、コミュニティー形成の場を球場は提供出来るはずだと考える。また「地域密着」とは、単にマスメディアの露出が多く、球団に人気があるという事を指すのではない。球団がその地域の中に存在する以上、選手および球団関係者は地域の一員である事は言うまでもない。しかし現状のプロ野球のあり方では、球団は企業の一所有物、広告宣伝のためのツールでしかない。試合を見せるのはもちろんのこと、地域社会にどのような貢献が出来るのか、つまり地域社会が抱える問題に対して、球団としてどのようにアプローチし、どのような解決策を提示するのかが問題である。地域社会のあらゆる問題に対して、共に考え、歩み、そして成長していく。これが本当の意味での「地域密着」であると我々は考える。

 以上のことから、我々が目指す「市民球団」設立には従来の企業主導型では不充分であり、生活に密着した環境や場の市民による育成が必要になる。それにはあらゆる立場でプロ野球を愛好し、市民球団という心の拠り所を求める人たちで構成される活動の存在が必須である。そのために当連絡会は組織の透明性、公共性を確保し、また自主的、自発的な運営を行うことで会員に責任の自覚を促し、社会的認知を高め、支持を拡大することで安定した支援体制を確立するため、 NPO 法人を設立するものである。


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